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吹奏楽曲(詳細)
作品名 仰ぎ見ること 〜 泰山北斗の如し
サブタイトル  
委嘱団体 青藍泰斗高等学校創立100周年記念 委嘱
作品No 063
シリーズ名  
作曲年 2008
グレード 2+
演奏時間 約6分30秒
演奏可能最低人数 18人
参考音源 CD
楽譜出版 ウインドアート
解説 ■ 青藍泰斗高等学校吹奏楽部顧問、與儀和弘先生による作品誕生の秘話!

1.はじめに

 青藍泰斗高等学校創立100周年記念委嘱作品。明治41(1908)年に創立された青藍泰斗高等学校(旧葛生高等学校)は平成20(2008)年に創立100周年を迎えました。これを記念して、校名にちなんだタイトルをもつ曲を作曲していただきました。

 私は、本校創立100年という大きな節目に立ち会えることを大変幸せに思っていました。そして生徒たちにもそう感じて欲しいと思いました。ですから、その思いを形にしたいと数年前から考えていました。幸い、吹奏楽部顧問という立場を与えていただき、音楽で100周年に花を添えることができます。また、曲というものは無形かつ永遠の文化的財産です。青藍泰斗高等学校の永久の繁栄を願うシンボルとして新しい曲をつくっていただこう、と考え、本校の理事長である永井成雄先生にお計らい頂き、若手作曲家として活躍している八木澤先生に作曲を委嘱することとなりました。

●委嘱にあたって演奏に関しての要望を!

委嘱にあたり、八木澤先生に以下の点をお願いしました。

(1)中学生が無理なく演奏できる程度の難易度
(2)20名以内で演奏できる小編成作品(具体的には下記編成をご覧ください)
(3)7分以内で完結

 曲は序奏の後、まずこの曲の主題ともいえる4声のシンプルなコラールから始まります。TimpとBongoのソロをはさんで速度の速い4拍子へ。一度クライマックスを迎えたのち、クラリネットのトリルを奏しながら竹・笹の登場。3拍子のリズミカルなメロディーを経て、再び速度の速い4拍子。その後曲の最初で奏したコラールが再び登場。木管楽器と竹・笹の奏する静寂が感じられる部分を経て、3拍子の柔らかいメロディーへ。徐々に盛り上がっていき、最後は情熱的にクライマックスを迎えます。拍子やダイナミクス、雰囲気の変化が激しく、目まぐるしい場面変化を的確に表現することが大切だと思います。それぞれの場面は、人生の艱難辛苦であり、それを乗り越えて何かを得た時の達成感や感動を曲の最後で迎えるような作りになっていると思います。

2.曲のコンセプト

平成19年7月、八木澤先生に初めて本校吹奏楽部の練習を見ていただき、夜は食事をしながら話し合いをさせていただきました。私はとにかく本音で色々と話をさせていただきました。学校について、吹奏楽部について、生徒について、私自身の考えについて・・・少しでも分かってもらいたくて資料もたくさんお渡ししました。

 本校の吹奏楽部はこれまでコンクールで華々しい活躍をしてきたわけではありません。むしろその逆で、出場すれば常に銅賞。金賞などとったことは一度もありません。しかし、ここ数年、人数も徐々に増え、バンド全体の実力も少しずつ上昇してきたことも感じていました。ただ、何かが足りない。その大きな要因の一つは生徒たちの気持ちにあると思っていました。

 吹奏楽部の部員たちは大人しく、自己表現が苦手で、コンプレックスの塊です。吹奏楽部員のくせに人前に出るのが苦手です。でも、素直で、純粋で、一つのことをじっと我慢してやりぬく力はあります。難しいことはできませんが、丁寧に、単純な練習を繰り返し、繰り返しすることはできます。私はそんな部員達の特性は、今後社会で生きていく上でとても大事な、いや、もっとも重要な要素だと思っています。そんな部員達の特性を一番引き出してくれる、輝かせてくれる曲を書いてほしかったのです。その結論として「目標や希望に向かって突き進む若者の姿」「教える側と教わる側の、言葉にならない熱い思いの共有」「困難に打ち克つ強い意志とひたむきさ」「一途に一つの道に精進してつかむ輝き」などを曲に込めていただくことになりました。八木澤先生が私の話を聞いて、また、吹奏楽部の部員達を見て、このように感じてくださったことは、顧問として大きな喜びでした。また、「無」から「有」を産み出す瞬間に立ち会えたことが幸せでもありました。その場で曲名「仰ぎ見ること〜泰山北斗の如し」は決定しました。

3.曲名について

「青藍泰斗高等学校」は平成17年4月に「葛生高等学校」から校名を変更しました。「青藍」は「青は藍より出でて藍よりも青し」という言葉から、子供や教え子が、親や教師を上回る人間になるということ。「泰斗」は「仰ぎ見ること泰山北斗の如し」という言葉の略です。「泰山」とは中国・山東省にある山で、聖なる山とされています。「泰山の安きに置く(安定した状態にすること)」、「泰山は土壌を譲らず(心を広くして他人のどんな小さな意見も受け入れなければ大人物になれないという戒め=泰山が大きな山となったのは小さな土くれでも受け入れた結果であるという意味から)」といったことわざにもよく使用される著名な山です。「北斗」とは北辰(北極星)のことで、「論語」にも〈北辰のそのところにいて、衆星のこれを迎えるが如し〉とある通り、星の中心として仰がれていることを立派な人物になぞらえています。「泰山」も「北斗」も、人々から仰ぎ見られる存在です。そのことから「泰斗」とは「学問・芸術の分野で、権威を持ち尊敬されている人」を意味するようになりました。

未完成ではあるが瑞々しく生命力溢れる若者が、その生涯をかけて自己実現の為に、何か一つのことに誠実に勤勉に専心し、その道でなくてはならない存在(泰斗)になること、オンリーワンになることを期待し、このような校名に変更しました。まさにこの校名は本校100年の歴史で貫いてきた教育方針を表わすものです。そしてそれは吹奏楽部の部員達への指導の柱ともなっているものなのです。

4.「仰ぎ見ること」との出会い

 曲が完成し、楽譜が手元に届いたのは平成20年1月中旬でした。依嘱した時に平成20年3月の定期演奏会での初演と決めていましたので、約2カ月の練習期間です。早速スコアを見て、まず目に留まったのは「竹や笹の音」という言葉。すぐに八木澤先生に電話してイメージをうかがいました。「竹は鳴子のようにカラカラ鳴り、(竹か笹の)葉がサラサラと鳴る」ということでした。幸い、本校は田舎にある学校ですので、すぐそばに山があり、竹も生えています。本校副校長のお宅の裏に素晴らしい孟宗竹(モウソウチク)の竹林があり、その竹を頂きました(竹・笹について詳細は後述)。部員達と山に登り、竹を切り、加工し、手作りの楽器が出来上がりました。

 2月初めに八木澤先生にレッスンしていただきました。作曲者自ら曲のイメージを伝えてもらえるという幸せな瞬間でした。3月の定期演奏会での初演には八木澤先生も来ていただけることになっていました。実は「初演は八木澤先生に指揮をしてもらいたい」とお願いしたのですが、「これは先生と生徒さんの為に書いた曲ですから先生が振ってください。その代り、僕は違う曲を振りますよ。」と言ってくださり、「ピリ・レイスの地図」を指揮していただくことになっていました。

 八木澤先生のレッスンを見ていて私はとても衝撃を受けました。八木澤先生の棒から生み出される音楽は、とてもうちの部員が演奏しているものとは思えなかったのです。「うち、こんなにうまかったっけ?」というのが正直な感想です。と同時に、ものすごい嫉妬心のようなものがメラメラと湧き上がってくるのを感じました。自分のバンドを自分以上にうまく振る人がいるのは悔しかったのです。恐れ多くも八木澤先生に対抗心を燃やすと同時に、実は自分が一番コンプレックスの塊で、自分と生徒が作る音楽に自信を持てていなかったということに気がつき、愕然としました。「生徒たちが下手くそなのではなくて、自分が下手くそで、生徒たちが弱気なのではなくて、自分が一番弱気なのだ」という現実を受け入れ、「背伸びせず、自然体でいこう」と思えるようになったのも、八木澤先生と「仰ぎ見ること」のお陰でした。

5.大トラブルの中での初演

 初演の定期演奏会に向けて順調に練習が進んで行きました。そんな2月下旬、大トラブルが起こりました。私が急きょ入院することになってしまったのです。「膵炎」の発作が起きてしまったのです。2度目の入院でした。少なくとも10日前後、長ければ1か月から半年も入院しなければならない病気です。当然、学校では定期演奏会の中止も検討されたようですが、私は「練習は生徒だけでもできる。私は本番だけは外出許可をもらって必ず行く。」ということで、予定通り行うことになりました。後日、八木澤先生は「いざとなったら僕が指揮をするつもりだった。」とおっしゃっていましたが、とにかくご心配をおかけしました。私はとにかく生徒を信じるしかできません。当日の体調が出来るだけ良くなるように、病院のベッドの上で医者の言う事を聞きながら、ひたすら横になっているだけでした。生徒たちは3年生を中心に、自分たちで演出などを考え、練習してくれていたようです。

 前日のリハーサルと当日、外出許可をもらい病院から直接ホールに向かいました。前日のリハーサルは八木澤先生も駆けつけて下さり、最後のレッスンをしてくださいました。そして当日、予定通り演奏会は行われました。八木澤先生客演指揮の「ピリ・レイスの地図」の演奏を袖で聞きながら、さらに上達している生徒たちの音と、生徒たちの力を100%引き出す八木澤先生の指揮、そしてその二つが生み出す素晴らしい音楽に、純粋に感動しました。そして「自分はこれ以上の音楽をしなければ」と思いました。

 ステージで八木澤先生とトークさせてもらった後、いよいよ「仰ぎ見ること〜泰山北斗の如し」の初演となりました。不思議と緊張感はあまり感じませんでした。ステージの上には穏やかな空気が流れているようにすら感じました。あとはひたすら夢中で棒を振り続けました。棒から発せられる私の想いが、部員一人ひとりにもれなく伝わっているという感覚、私の想いと部員の想いがシンクロして音楽となり、客席も巻き込んで一体となっている不思議な感覚、他に何も考えていない、考えられない、研ぎ澄まされた感覚・・・さまざまな感覚を感じながら、曲は進んで行きました。そして、最後の音が消えた瞬間、会場からの割れんばかりの拍手と「ブラボー」の声。袖からは八木澤先生が満面の笑顔で迎えてくれました。不思議と、涙が止まりませんでした。なぜ、涙が出るのか分からないような涙でした。これの感覚が本当の「感動」と言うのだ、と思いました。

 この体験を通じて、生徒たちは大きく成長したと思いますが、実は一番成長したのは自分自身なのかもしれません。ちなみに、定期演奏会は無事に終了しましたが、私の入院生活はそれから約1カ月間続いたのでした。

6.コンクール

 平成20年4月、私はまだ入院していましたが、生徒たちは無事に18名の新入部員を迎え、新たなスタートを切りました。私は5月から職場復帰し、次の目標・・・コンクールに向けてスタートを切りました。

 新たに竹も取りに行きました。例年以上に厳しい練習をしました。7月末に八木澤先生に来ていただき、レッスンしていただいた時には、生徒たちの進化に喜んでいただくと同時に、コンクールに向けての最後の詰めをしていただき、これまでにない万全の状態でコンクールに臨むことができました。ただ、結果には全くこだわっていない自分に、自分でも不思議でした。生徒にも焦りを感じませんでした。「自信」というと大げさなのですが、やるだけのことはやったという達成感があったのかもしれません。まさに「自然体」でした。コンクール当日もそうでした。私も生徒たちも緊張感はあまりありませんでした。周りから見たら「やる気あるの?」というくらい、リラックスしていました。

 でも、ステージの上では気合いがみなぎっていました。情熱的な演奏ができたと思います。定期演奏会の時以上に、熱い想いの共有から発せられるエネルギーが放出されたと思います。これだけやったのだから、客席の人たちにも喜んでもらおう、もちろん、審査員にも、そういう気持ちでした。
 
 結果は、創部以来初の金賞でした。生徒たちも、少しは自信がついたかなと思います。ただ、残念ながら、ほんの少しの差で県代表にはなれませんでした。八木澤先生に書いていただいたこの素晴らしい曲を、私達の大好きなこの曲を、もっとたくさんの人に聞いてほしかった、東関東大会という大舞台で披露したかった、そういう意味では残念ですし、八木澤先生に申し訳ない気持ちでしたが、いわゆる「ダメ金」というこの結果は、「うちらしいな」とも思えるのです。

7.愚直に、ひたすらに、ひとすじに

 この曲はその後も何回か演奏させていただきました。練習をするたびに新しい発見があります。改めて、八木澤先生の作られたこの曲の深さを思い知ることができます。不思議なことに、部員たちがもめている時にこの曲を演奏しても、いい結果は得られません。全員が心を一つにして、まっすぐな気持ちになった時に初めて良い音楽になる、そんな当たり前のことを教えてくれる曲だと思います。

 最近、「愚直」という言葉が好きになりました。他人からバカにされても、正しい事をひたすらに、ひとすじにやり続ければ、いつか花が咲き実を結ぶ、そう思います。世の中では見た目の派手さやきらびやかさが喜ばれます。自分の利益のためには、他人の不利益も仕方がないという風潮もあります。私は生徒たちにはそんなことは教えたくない。少なくとも、スクールバンドの現場においては、絶対にあってはならないことだと思っています。私は、八木澤先生の人柄に触れ、八木澤先生の作品に触れ、「仰ぎ見ること〜泰山北斗の如し」に出会うことで、この事を一層強く思うようになりました。

 「金賞」とか「県代表」とかは他人が決めることです。それよりも、もっと大切な何かを学ぶことの方が良い、そして、それが出来るのがスクールバンドなのだと思います。コンクールの金賞には数に限りがあります。しかし、それぞれのバンドの金賞があり、それぞれの生徒の金賞があるはずです。それに気づかせてあげることが、スクールバンドの指導者の責任ではないでしょうか。

 「仰ぎ見ること〜泰山北斗の如し」は、難しいテクニックは必要ありません。派手な曲でもありません。しかし、心は一番大切にしてもらいたいと思います。

 ある生徒が「ほかの学校が『仰ぎ見ること〜泰山北斗の如し』を演奏しているのを聞いてみたい」と言っていました。私も、それぞれの「仰ぎ見ること〜泰山北斗の如し」を聞いてみたいですし、この曲が多くの方々に演奏され、それぞれの「金賞」の感動を味わっていただけることを願ってやみません。この曲のコンセプトは本校の教育方針そのものを表すものですが、同時に、人間が生きていくうえでの普遍的指針としても価値のあるものだと思います。この曲とともにこの曲にこめられた本校の精神が、より多くの人に伝わることを期待しています。

8.最後に

 素敵な曲をつくっていただいた八木澤教司先生、八木澤先生と私を引き合わせて下さった藤田達朗先生、ウインドアート出版代表神長一康様、本校創立者永井泰量先生、曲を委嘱する許可を頂いた理事長永井成雄先生、「青藍泰斗」の校名の生みの親である学校長永井治寿先生、また、普段からサポートしてくださるオンダ楽器の五十嵐さん、これまでの歴代の部員たち、支えて下さる全ての皆さんに感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
編成 Fl. Ob(Opt) Bsn(Opt) Cl.1-2 B.Cl. S.Sax(Opt) A.Sax T.Sax B.Sax
Tp.1-2 Hr.1-2 Trb1-2 Euph. Tu. St.Bass(Opt) Timp. 
Perc1(S.Cym、Vib,Glock,竹・笹) Perc2(Cym,Bongo、S.Drum,TomTom(4),Tri,B.Drum,W-Chim)

やぎりん日記

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